戦略、戦略っていうけどさ

帯の裏表紙側にあった目次の抜粋にしびれて購入しました。

目次より
何が何でも成長戦略?
戦略はサイエンス系?
我が社には戦略がない?
戦略は観と経験と度胸!
企業は人選により戦略を選ぶ

まず著者は戦略という言葉の定義を問いただしています。
日ごろ「○○戦略」というフレーズを気軽に口にしているわたしは、いきなり焦ってしまいました。
「商品戦略」「価格戦略」「コミュニケーション戦略」などなど、安売り状態です。


著者は戦略についていくつか指摘しています。

戦略の目的は長期利益の最大化にあると私は捉えます。(P16)
戦略とは、新たな市場取引を創造し、それによって人々の幸福度を増進させるものなのです。(P18)
変わりにくい長期利益、それを十年単位でいかにシフトアップさせていくか、それが本当の戦略だと私は考えています。(P31)
神戸大学の経済経営研究所を退官された吉原英樹先生は、戦略の本質を「『バカな』と『なるほど』」と表現されました。(P53)
戦略は、「立地」と「構え」と「均整」に凝結します。(P102)

以上は、本の前半に登場する記述です。


いかに「戦略」という言葉を曖昧に使っているかわかります。

gooで辞書検索してみました。

長期的・全体的展望に立った闘争の準備・計画・運用の方法。戦略の具体的遂行である戦術とは区別される。
三省堂提供「大辞林 第二版」より

自分の仕事も長くても一年以内、基本的には半年以内のスパンで進めていますから、確かに「長期的・全体的」ではないです。
でもなぜか「商品戦術」といわず、「商品戦略」といいたくなるのは、なぜなのでしょうか。


さて、後半は「戦略をだれが担うか」という核心に踏み込んでいきます。

部課長に頭を使わせるのは良いのですが、会社や事業の「立地」、「構え」、「均整」となると、彼らの手に負えるものではありません。(P112)
日本企業は、ここ数年、「事業の選択と集中」を精力的に進めてきましたが、本当に必要なのは経営層における「人材の選択と集中」なのだと思います。(P122)
予想外の新しい展開にリアルタイムでどう対処するのか、それが結果として戦略になる。(P134)
戦略の本質は「為す」ではなく、「読む」にあります。経営者が持つ時代認識こそ、戦略の根源を成すのです。(P138)
知識の本質は過去の経験にありますが、経営は本質的に不確定な未来に向かって作用するものなのです。(P172)
戦略は、協調を要することもありますが、基本的には衆知を超えて初めて花開くという代物です。(P198)

時代の流れのような大局的な視点をもてるかどうか、と問われると、正直まったく自信がありません。
経験で考えることがすっかり身についてしまっているからです。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。(ドイツの宰相、ビスマルク

とますますブルーになりますが、最後の著者からのメッセージに勇気付けられます。
「中堅社員に送るメッセージ」として、経営者を志すならば、として「精神的自立」の必要性を指摘します。

条件反射的にリスクから逃げるのではなく、また無謀なリスクに挑むのでもなく、計算不能なリスクをとるためには、協調の精神だけでは済まされません。それを超えた何かが要求されるように思います。それこそが自立の精神であり、それを身につけることこそ、経営職を志す中堅社員に課された試練なのではないでしょうか。

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三品 和広

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